【相続税・贈与税】結婚子育て資金の一括贈与の非課税制度は相続税対策になる?

-制度の概要-
20歳以上50歳未満の受贈者が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との契約に基づき、受贈者の直系尊属である贈与者から結婚・子育て資金口座の開設等をした場合には、1,000万円までの金額については、金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。

契約期間中に贈与者が死亡した場合には、死亡日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額(結婚に際して支払う金銭については、300万円を限度とします。)を控除した残額(管理残額)を、贈与者から相続等により取得したとみなされます。

受贈者が50歳に達することなどにより、結婚・子育て口座に係る契約が終了した場合には、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったこととされます。

-この制度は相続対策になり得るか-
<相続対策>
**祖父母から孫への贈与**
祖父母から挙式費用や不妊治療費用などの結婚・子育て資金をその都度贈与しても、扶養義務者間の贈与なので贈与税は課税されません。詳しくは、国税庁HPをご参照下さい。
贈与税の課税の問題が生じるのは、将来の結婚・子育て資金分までまとめて贈与した場合なので、ある程度まとまった金額となります。

ところで、厚生労働省によると平成27年度の平均初婚の年齢は、夫31.1歳、妻29.4歳で男女とも概ね30歳前後です。30歳の孫に祖父母が結婚・子育て資金を贈与する場合の祖父母の年齢は、80歳前後のケースが多いと思われます。
そうすると祖父母から贈与を受けた結婚・子育て資金を使い切る前に祖父母に相続が発生してしまうことが想定されます。

この制度は、贈与を受けた結婚・子育て資金を使い切らないうちに祖父母に相続が発生した場合には、その残額(管理残額)は2割加算の適用こそはありませんが、贈与者から相続等により取得したとみなされてしまいます。本来相続人ではない孫にも相続税が課税されてしまう可能性があるため、相続税対策としては利用しづらいといわざるを得ません。

**両親から子への贈与**
両親がその子に結婚費用や子育て資金の面倒をみてあげるのなら、必要に応じてその都度出してあげれば済む話です。
仮に両親から子へ結婚・子育て資金を一括贈与し、使い切らないうちに両親に相続が発生してしまうと結局その残額は相続等により取得したものとみなされてしまいます。それなら、必要に応じてその都度負担した場合と結果的に同じことになり、相続税対策にはならないだろうと思われます。

<相続対策>
相続対策にはならなくても、とりあえず無税で子や孫に結婚・子育て資金としてまとまった金額の援助をしてあげられるので、相続対策にはなるかもしれません。
例えば、遺言を書くほどのものではないけれど祖父母が孫のために何かしてあげたいという場合に、孫に結婚・子育て資金として生前に援助してあげるケースが考えられます。ただし、使い残した場合その残額が相続税の対象となるので、その相続税の負担を考慮してあげる必要があります。
あるいは、親が子供達にかけた教育費などのバランスを考え、その調整として結婚・子育て資金の一括贈与の制度を利用することが考えられます。

-教育資金の一括贈与との比較-
教育資金の一括贈与場合と結婚・子育て資金の一括贈与の場合とにおける、贈与者が死亡した場合の取扱いの違いはつぎのとおりです。

 教育資金の一括贈与  結婚・子育て資金の一括贈与
 贈与者の要件  贈者の直系尊属であること  贈者の直系尊属であること
 受贈者の要件  30歳未満である者  20歳以上50歳未満である者
期間中に贈与者が死亡した場合 贈与者の死亡による課税関係は生じない。 資金残額は相続又は遺贈により取得したものとみなされ、贈与者の死亡に係る相続税の課税対象となる。
・相続税額の2割加算は適用はない。
・他に相続税の課税対象となる取得財産がない場合には、相続開始前3年以内の贈与加算は適用はない。

 

∞∞ 吉岡 ∞∞

 

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