消費税

【消費税】年の途中で遺産分割が確定した場合の納税義務の判定

2020-11-20

被相続人が消費税の課税事業者であった場合で、相続人がその事業を承継したときの消費税の納税義務の判定は次のとおりです。(消法10)

相続があった年 被相続人の基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えるか否かで納税義務を判定します。
相続があった年の翌年又は翌々年 被相続人の基準期間の課税売上高と相続人の基準期間の課税売上高との合計額が1,000万円を超えるか否かで判定します。

相続人が2人以上いる場合で、被相続人の遺産が各相続人に分割されていない状態のことを共同相続といいます。

この共同相続の場合の消費税の納税義務は、どうなるでしょうか。

このような場合は、法定相続分で判断するとされています。

例えば、被相続人の基準期間の課税売上高が3,000万円だとして、共同相続人が配偶者と子供2人であったします。
この場合、納税義務の判定に用いる被相続人の基準期間における課税売上高は、配偶者は3,000万円×法定相続分1/2=1,500万円、子2人は各3,000万円×法定相続分1/4=750万円となります。

消基通1-5-5( 共同相続の場合の納税義務)
法第10条第1項又は第2項《相続があった場合の納税義務の免除の特例》の規定を適用する場合において、2以上の相続人があるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は被相続人の事業を承継する相続人は確定しないことから、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱う。この場合において、各相続人のその課税期間に係る基準期間における課税売上高は、当該被相続人の基準期間における課税売上高に各相続人の民法第900条各号《法定相続分》(・・・)に規定する相続分に応じた割合を乗じた金額とする。

通常、相続財産の分割の実行は年の途中で行われます。
例えば、亡くなったのが2月で、その年中に遺産分割協議が整ったような場合、遺産の分割は相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法第909条:分割の遡及効)とされていることからどのように判断すればよいでしょうか?

相続財産の分割が年の途中で実行さた場合の扱いは、相続があった年、相続があった年の翌年又は翌々年のいずれも、法定相続分で消費税の納税義務を判断してもよいようです。

その根拠としては、東京国税局と大阪国税局の次の文書回答事例が参考になります。

東京国税局 (平成24年9月18日付)
前年に相続があった場合の共同相続人の消費税の納税義務の判定について
国税庁HP👈)
大阪国税局 (平成27年3月24日付)
相続があった年に遺産分割協議が行われた場合における共同相続人の消費税の納税義務の判定について
国税庁HP👈)

なお、上記文書回答事例の中で、質問者は、納税義務の判定に用いる被相続人の基準期間における課税売上高を法定相続分で判定することについて、下記の点を掲げています。

■消費税は事業者が販売する商品やサービスの価格に含まれて転嫁していくものであることから、その課税期間が課税事業者に該当するかどうか、特に免税事業者から課税事業者となる場合には、事業者自身が事前に予知しておく必要があること

■課税事業者となる場合には、消費税法に規定する帳簿の記載などが必要となりますのでこれらに対する事前準備や簡易課税制度を選択する、あるいは免税事業者が課税事業者となることを選択する場合は、その課税期間の開始の日の前日までに所定の届出書を納税地の所轄税務署長に提出することなどからも、事前に予知しておく必要があること

■(相続があった年は)被相続人の基準期間における課税売上高だけで納税義務の有無を判定するものですが、相続があった年に、年の途中から、しかも相続の直後に煩雑な事務処理をしなければならないこと

■相続財産が未分割の場合における納税義務の判定方法が消基1-5-5に示されていること


遺産分割があった年の翌年の納税義務の判定については、下記の取扱の規定があります。

消令21( 相続があつた場合の納税義務の免除の特例)
相続により、2以上の事業場を有する被相続人の事業を2以上の相続人が当該2以上の事業場を事業場ごとに分割して承継した場合に・・・については、・・・被相続人の基準期間における課税売上高は、当該被相続人の当該基準期間における課税売上高のうち当該相続人が相続した事業場に係る部分の金額とする。

 

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【消費税】事業を承継した場合の納税義務の判定

2020-11-18

消費税の納税義務は、基準期間(個人の場合は2年前)の課税売上高が1,000万円を超える場合と特定期間(前年の1月~6月)の課税売上高と支払給与が1,000万円を超える場合です。

では、被相続人が消費税の課税事業者であった場合で、相続人がその事業を承継したときの納税義務の判定はどのようになるのでしょうか。


1.相続があった年の納税義務の判定(消法10①)

被相続人の事業を承継した相続人に消費税の納税義務※がない場合で、基準期間における被相続人の課税売上高が1,000万円を超える事業を承継したときは、相続のあつた日の翌日からその年12月31日までの間については消費税の課税事業者となります。

つまり、相続があった年は、相続人の基準期間における課税売上高は考慮せず、被相続人の2年前の課税売上高が1,000万円を超えるか否かで納税義務を判定します。

※相続人が課税事業者の選択をしている場合及び特定期間の課税売上高と支払給与が1,000万円を超える場合を除きます。


2.相続があった年の翌年又は翌々年の判定(消法10②)

相続があった年の翌年又は翌々年の基準期間における被相続人の課税売上高と相続人の課税売上高との合計額が1,000万円を超える場合は、相続があった年の翌年又は翌々年については消費税の課税事業者となります。

つまり、相続があった年の翌年、翌々年は、被相続人の基準期間の課税売上高だけでなく、相続人の基準期間の課税売上高も加算して判定します。

 

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【消費税】事業を承継した相続人の消費税の届け出と期限

2020-11-16

被相続人が消費税の課税事業者であった場合で、その被相続人が提出した各種届出は事業を承継した相続人には及ばないので、改めて諸々の届け出をする必要があります。

1.被相続人に関するもの

国税庁HP 期 限
個人事業者の死亡届出書 速やかに

2.事業を承継する相続人に関するもの

国税庁HP 期 限
消費税課税事業者届出書(基準期間用)
相続・合併・分割等があったことにより課 税 事 業 者 と な る 場 合 の 付 表
・速やかに
消費税簡易課税制度選択届書
(消基通13-1-3の2)
・個人事業を営んでいない相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合
→相続があった日の属する課税期間中※に「簡易課税制度選択届出書」を提出
・相続開始以前から個人事業を営んでいる相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合 ・被相続人が簡易課税制の適用を受けていた場合
→相続があった日の属する課税期間中※に「簡易課税制度選択届出書」を提出
・被相続人が簡易課税制度の適用を受けていなかった場合
→選択不可
消費税課税事業者選択届出書
(消基通1-4-12)
・個人事業を営んでいない相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合
→相続があった日の属する課税期間中※に「課税事業者選択届出書」を提出
・相続開始以前から個人事業を営んでいる相続人が相続により被相続人の事業を承継した場合 ・被相続人が課税事業者の選択の適用を受けていた場合
→相続があった日の属する課税期間中※に「課税事業者選択届出書」を提出
被相続人が課税事業者の選択の適用を受けていなかった場合
→選択不可

※提出時期の特例
亡くなった時期によっては、相続があった日の属する課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」や「課税事業者選択届出書」を年末までに提出することが事実上困難な場合があります。

このような場合には、亡くなったのが提出期限前おおむね1ヵ月以内のときは、亡くなった年の翌年2月末日までに「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請」や「消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」を提出すれば亡くなった年から課税事業者になることが認められています。
(消基通1-4-16、1-4-17 、13-1-5の2 )

 

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【コラム】金の密輸

2020-11-06

消費税不正、40億円を追徴課税…金地金買い取り業者など80法人・個人

国税当局が、全国の免税店などを対象に消費税の不正申告の有無を調べる一斉税務調査を行い、約80の法人と個人に計約40億円を追徴課税したことが関係者の話でわかった。うち約30億円は金地金買い取り業者2社への課税で、中国人などから金地金を買い取ったとする帳簿の記載に裏付けがないと判断された。(2020年10月28日 読売新聞)


金地金密輸のスキーム

①日本から現金を持ち出す。(仮3,500万円)

②香港・シンガポールなど消費税がかからない国で金地金を購入する。(仮5kg 3,500万円)

③税関で輸入申告をしないで入国
※本来なら携帯品・別送品とした場合でも輸入消費税10%がかかります。
※実際には、現地で買い付けた金地金を小分けにして運び屋を使うようです。
※地金(純度 90%以上)の重量が 1 ㎏を超える場合は、税関へ「支払手段等の携帯輸出・輸入届出書」を提出しなければなりません。(通関案内PDF参照)

④密輸業者は金の買取業者に消費税10%を上乗せして売却(消費税分350万円の儲け)
※3,850万円-3,500万円=350万円

⑤金の買取業者から大手商社に転売
※買取価額と売却価額との差が利益になります。

⑥大手商社が金国際市場へ輸出(ロンドン、シンガポール、香港等)
※買取価額と売却価額との差が利益になります。
※消費税分350万円は輸出免税として還付されます。

財務省資料を参考としました。)


金地金の密輸の対策としては、密輸業者を厳しく取り締まる一方、密輸しても用意に換金できないような仕組みづくりが必要です。

平成30年度の税制改正で罰則の強化(財務省:税制改正の解説より)

罰則規定 改正前 改正後
消費税法第64条
(消費税ほ脱)
1,000万円
又は
脱税額が1,000万円超の場合は脱税額
1,000万円
又は
脱税額の10倍が1,000万円超の場合は脱税額の10倍
地方税法第72条の109
(地方消費税ほ脱)
1,000万円
又は
脱税額が1,000万円超の場合は脱税額
1,000万円
又は
脱税額の10倍が1,000万円超の場合は脱税額の10倍
関税法第111条
(無許可輸出入罪)
500万円 1,000万円
又は
貨物の価格の 5 倍が1,000万円超の場合は貨物の価格の 5 倍

令和元年度税制改正で金地金等の密輸に対応するための消費税における仕入税額控除の見直し(財務省:税制改正の解説より)

改正前 改正後
金地金等の課税仕入れについては、
・密輸品であったとしても、
・課税仕入れ等の事実を記載した帳簿を保存することに
より、仕入税額控除が可能
⑴仕入税額控除の要件強化
金又は白金の地金に係る仕入税額控除について、「本人確認書類※の保存」を要件に追加する。
※本人確認書類 個人:免許証、パスポート等 法人:登記事項証明書等
⑵仕入税額控除の制限
密輸品と知りながら行った課税仕入れについて、仕入税額控除を認めないこととする。

 

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【法人税・消費税・地方税】よく似た名称の税

2020-10-08

企業の経理担当はご存知だと思いますが、法人の申告にはよく似た名前が出てきます。

【地方法人税】
地方の名称がついていますが、法人税とともに納める国税で、法人税の申告書「別表1の次葉」で税額計算し、「別表1」で納付税額を算出します。

平成26年の消費税率の引き上げ(5%→8%)の際の税制改正で創設され、平成28年度に改正されています。

改正の趣旨は、地方法人課税の偏在是正のため、法人住民税法人税割の税率を5.9%引き下げる(都道府県分を3.2%から1%の2.2%、市町村分を9.7%から6%の3.7%、それぞれ引き下げる)とともに、地方法人税の税率を5.9%(引下げ分相当)引き上げることとされました。(国税庁HP 👈クリック)

【地方消費税】
これは、都道府県税ですが、国税である消費税の計算ととともに一旦国に納付します。

国は納付があった月の翌々月末日までに、地方消費税を都道府県に払い込みます。一方、都道府県は徴収取扱費を国に支払います。各都道府県に払い込まれた地方消費税は、都道府県ごとの消費に相当する額に応じてあん分し、清算されます。(東京都HP 👈クリック)

【地方法人特別税 ⇒ 廃止】
平成20年度の税制改正により創設され、地方税である事業税とともに計算しました。
制度の趣旨は、地域間の税源偏在を是正するためですが、消費税を含む税体系の抜本的改革が行われるまでの間の暫定措置でした。

令和元年9月30日までに開始する事業年度をもって廃止され、特別法人事業税に衣替えしました。

【特別法人事業税】
令和元年度税制改正により、地方法人課税における税源の偏在を是正するため、法人事業税の一部を分離し、特別法人事業税が創設されました。(東京都HP👈クリック)

 

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【消費税】レジ袋有料化

2020-09-15

容器包装リサイクル法の省令改正により、持ち手がついたレジ袋の配布は有料にすることが義務付けられた。価格は1枚1円以上で事業者が自ら決める。海中で分解される海洋生分解性プラスチック100%にしたり、バイオマス素材を25%以上配合したりした場合は無料で配れる。(2020/6/30 日経)


7月1日からレジ袋の有料化が義務づけられています。

レジ袋を扱う小売業者の全てが対象となります。
下記は有料化の対象から除外されてますが、日常生活で使うレジ袋のほとんどが有料化の対象になります。

プラスチックのフィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの 繰り返し使用が可能であるため
海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの 微生物によって海洋で分解されるため
バイオマス素材の配合率が25%以上のもの 植物由来がCO2総量を変えない素材であため

「有料化義務違反」となると、行政サイドから勧告、指導等が入り、状況によっては事業者名(企業名)が公開され、悪質の場合は50万円以下の罰金刑となるようです。

ここで厄介なのが、消費税の扱いです。
6月30日までは、多くの場合レジ袋は無料でした。これは、商品に付帯して通常必要なものは「飲食料品の譲渡」に該当するとされているからです。

消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)より(国税庁HP👈クリック)


(飲食料品を販売する際に使用される容器)
問25  飲食料品を販売する際に使用する容器は、どのような取扱いになりますか。

【答】
飲食料品の販売に際し使用される包装材料及び容器(以下「包装材料等」という。)が、その販売に付帯して通常必要なものとして使用されるものであるときは、当該包装材料等も含め軽減税率の適用対象となる「飲食料品の譲渡」に該当します。
ここでの通常必要なものとして使用される包装材料等とは、その飲食料品の販売に付帯するものであり、通常、飲食料品が費消され又はその飲食料品と分離された場合に不要となるようなものが該当します。
なお、贈答用の包装など、包装材料等につき別途対価を定めている場合のその包装材料等の譲渡は、「飲食料品の譲渡」には該当しません。


ところが、7月1日からレジ袋の有料化が義務付けられたため、別途対価が定められているとして、食料品を購入してもレジ袋は10%の消費税率を徴収しなければならなくなりました。

このため、コンビニやスーパーでは数円のレジ袋代金のために、食料品の軽減税率8%と区別してレジ袋を標準税率10%でレジしなければならなくなりました。

また、飲食店などの事業者がスーパーなどで仕入れをしてレジ袋を購入すすると、やはり8%と10%に税率を区分して帳簿に記帳しなければならななくなりました。

レジ袋の有料化は地球環境を考えればやむを得ないことだと思います。
しかし、一方では民間の事務コストも考慮する必要があったと思います。

レジ袋の対価は数円です。レジ袋を「販売に付帯して通常必要なもの」として、消費税率8%としても税収的には大きな問題ではないと思います。

是非、検討していただきたいと思います。

 

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【消費税】原状回復費用と消費税

2020-09-09

新型コロナウイルス感染の長期化でオフィス縮小や店舗閉鎖が相次ぐなか、退去時に支払う「原状回復」費用を過剰請求されるケースが多発している。オーナーが施工業者を指定するのが慣例で競争原理が働かず、適正金額より3~6割高く請求されることがある。第三者による査定が重要だ。(2020/09/06 日経)


オフィスビルでも住宅でも、入居のときはオーナー、入居者ともに前向きな状態で、あまり揉める場面は出てきません。

ところが、退去となるとオーナーサイドでは新たな入居者を募集しなければならず、その間空室になり減収になります。
入居者サイドでは、つぎのオフィスを契約、内装、引っ越し、保証金が戻ってくるまでのつなぎ資金の調達、従前のオフィスの原状回復など、後ろ向きの業務が続きます。

住宅の場合とちがってオフィスは、通常、契約期間終了前に退去して原状回復まで終わらせます。
原状回復工事が契約期間中に終わらない場合には、原状回復工事が終わるまでの賃料が継続します。

大企業であれば、総務部などの担当部署が事務的に進めてくれますが、中小企業だと社長自ら交渉に当たらなければならず、意外と面倒です。


ところで、オフィスの場合、ビルのオーナー側では相当額の保証金を預かっています。
原状回復工事をオーナー側で行う場合は、預かった保証金から差し引いて残額を入居者に返還するのが一般的です。

この保証金から差し引くこととなる原状回復工事に要した費用相当額は、仮に収入として経理していなくても、消費税の計算では課税売上になります。
また、費用として経理していなくても原状回復工事に要した費用は課税仕入となります。

ちなみに、退去に関連して、賃貸借の契約期間満了前の解約で違約金が発生する場合があります。
この場合の違約金は、オーナーが入居者から中途解約されたことに伴い生じる逸失利益を補填するために受け取るものですから、損害賠償金として消費税の課税の対象とはなりません。

 

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【消費税】居住用賃貸建物係る仕入税額控除制度(令和2年度税制改正)

2020-09-07

住宅家賃は非課税であることから、居住用賃貸建物の取得に係る消費税は、本来は非課税売上対応課税仕入となって仕入税額控除の対象にはなりません。

ところが、建物にかかる消費税は、金額も大きいことからいろいろなスキームが考えられてきました。
当局もその都度、税制改正で「ふた」をしてきましたが、直近では金地金(きんじがね)還付スキームというのがありました。

これは課税仕入れを行った課税期間開始の日から3年間において、課税売上割合が著しく変動した場合には適用される「調整対象固定資産に関する課税仕入に係る消費税の調整」(詳しくは国税庁HP 👈クリック)を回避するために、意図的に金地金を売買を繰り返すことにより、課税売上割合を調整するというものです・


―改正内容-:居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限

事業者が、国内において行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないこととされました。

この場合の居住用賃貸建物とは、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産※1又は調整対象自己建設高額資産※2に該当するものをいいます。

※1高額特定資産とは、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が 1,000 万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。
※2調整対象自己建設高額資産とは、棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額(税抜)の累計額が 1,000 万円以上となったものをいいます。

この改正により、居住用賃貸建物に係る消費税は、端(はな)から仕入税額控除できないことになりました。
ただし、これでは中古マンションの転売業者にような場合、取得時には居住用賃貸建物として仕入税額控除ができず、マンションを売った場合にだけ消費税が課税される結果になってしまいます。


上記の「居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限」の適用を受けた「居住用賃貸建物」について、次のいずれかに該当する場合には、仕入控除税額を調整することとされました。

■第三年度の課税期間※1の末日にその居住用賃貸建物を有しており、かつ、その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間※2に課税賃貸用※3に供した場合

■その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に他の者に譲渡した場合

※1第三年度の課税期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間をいいます。
※2 調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間をいいます。
※3 課税賃貸用とは、非課税とされる住宅の貸付け以外の貸付けの用をいいます。

(詳しくは国税庁HP 👈クリック)

 

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【消費税】転売目的の中古不動産に係る消費税/東京地裁判決

2020-09-04

同社は販売目的の仕入れであり、仕入れ時の消費税を全額差し引くことができると主張。一方、東京国税局は販売までの期間にマンション居住者から家賃を受け取っていると指摘し、「家賃収入も事業の目的の一つで、全額を差し引く処理はできない」として同社に申告漏れを指摘した。

判決で清水裁判長は「仕入れの目的が不動産の売却にあることは明らか。賃料収入は不可避的に生じる副産物として位置づけられる」と指摘。賃料収入が見込まれるからといって全額を差し引けないとする国税の判断は「相当性を欠く」と結論づけた。(2020/09/04 日経)


消費税は、課税売上に係る消費税額から課税仕入に係る消費税額を控除して差額を納税し又は還付を受ける仕組みになっています。

ところが、課税仕入に係る消費税には、①課税売上のみに対応するもの、②非課税売上のみにに対応するもの、③課税売上と非課税売上に共通するものがあります。
事業者が個別対応方式を選択した場合は、控除する課税仕入に係る消費税額は原則としてつぎの算式により計算します。

課税仕入控除税額 = ①+ (③ × 課税売上割合)(国税庁HP👈クリック)

この新聞記事だけでは十分わかりかねますが、おそらく国は個別対応方式における用途区分で、③課税売上と非課税売上に共通するものと主張し、納税者は①課税売上のみに対応するものと主張したものと思われます。


同様の裁判で国は、転売目的の中古不動産に係る消費税の課税仕入れの用途区分は共通仕入れとして主張して来たようです。
今回は国が敗訴しました。まだ地裁判決なので国が控訴すればどうなるかわかりませんが、本件は納税者の主張の方に分があるような気がします。

なお、記事にもありますが今年(令和2年)の税制改正で、居住用賃貸物件の取得等に係る消費税の仕入税額控除が改正されていますので、このような問題は生じなくなっています。

 

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【消費税】法人の消費税の申告期限の延長の特例

2020-08-28

法人税の申告期限は原則、期末から2ヶ月後ですが、定款等によって株主総会が期末から2ヶ月以内に招集されない常況にあるときは、決算が確定しないことから、申請により1ヶ月間の申告期限の延長の特例があります。

ところが、消費税の申告についてはこのような特例がありませんでした。
これは、消費税は期中の課税売上高から課税仕入高を控除して計算するので、決算の確定を前提としていないためです。

法人税の申告期限が1ヶ月延長されていても、期末から2ヶ月を過ぎての納税は利子税(現行年1.6%:令和3年以降年1.1%)(財務省HP👈クリック)が生じてしまいます。
実務では、消費税の申告業務と並行して、法人の決算申告業務を行い、本来の申告期限である期末から2ヶ月後には法人税・地方税の見込税額を納めてしまいます。

理屈はともかく、消費税は期末から2ヶ月、法人税・地方税は期末から3ヶ月であることについて、実務面で下記のような指摘が続いていました。


・決算期末から 2 月の間に、決算書作成、決算発表、有価証券報告書への対応、消費税の確定申告書の作成等の業務が集中することにより、相当程度の時間外労働が発生している

・ その後の法人税の確定申告書の作成の過程で、消費税の申告内容に誤りが見つかった場合には、消費税の修正申告書の作成又は更正の請求に必要な書類の作成が必要となり、これらに伴う事務負担が発生している(財務省HP👈クリック)


これを受けて令和2年4月の税制改正で、下記のように改正されました。

「法人税の申告期限の延長の特例」の適用を受ける法人が、「消費税申告期限延長届出書」(国税庁HP👈クリック)を提出した場合には、その提出をした日の属する事業年度以後の各事業年度終了の日の属する課税期間に係る消費税の確定申告の期限を1月延長することとされました。

適用開始時期は、令和3年3月 31 日以後に終了する事業年度終了の日の属する課税期間から適用されます。
届出書の提出時期は、消費税の確定申告の期限の延長特例の適用を受けようとする事業年度末日までの提出となっています。

 

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