法人税

【法人税】(中小企業)経営資源集約化税制の創設

2020-12-16

令和3年度税制改正大綱での目玉の一つとして、経営資源集約化税制の創設があります。

この制度は、経済産業省・厚生労働省・国土交通省が共同で要望した事項ですが、その目的として「ウィズコロナ/ポストコロナ社会に向けて、地域経済・雇用を担おうとする中小企業による経営資源の集約化等を支援する。(経済産業省) 」とあります。

政府がイメージしているのは、中小企業版のM&A税制だと思います。
例えば、コロナでも余力のある販売会社が製造会社の株式等を買い取って製販一体の体制にする、観光地のホテル・旅館がコロナで疲弊した同業者を買い取るといったことでしょうか。


中小企業の経営資源の集約化による事業の再構築などにより、生産性を向上させ、足腰を強くする仕組みを構築していくことが重要である。このため、経営資源の集約化によって生産性向上等を目指す計画の認定を受けた中小企業が、中小企業の株式の取得後に簿外債務、偶発債務等が顕在化するリスクに備えるため、準備金を積み立てたときは、損金算入を認める措置を講ずる。・・・(令和3年度税制改正大綱13頁より)


[概要]

対象者 青色申告書を提出する中小企業者で中小企業等経営強化法の経営力向上計画※(経営資源集約化措置(仮称)が記載されたものに限る。)の認定を受けたもの
要件 その認定に係る経営力向上計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による取得に限る。)をすること
取得した株式等をその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有していること
その株式等の取得価額が 10 億円を超える場合は対象とはならない
損金算入 その株式等の価格の低落による損失に備えるため、その株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入できる
益金参入 この準備金は、その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、その株式等の帳簿価額を減額した場合等において取り崩すほか、その積み立てた事業年度終了の日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間でその経過した準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入する。

※中小企業等経営強化法の改正が前提で、この制度が現行の経営力向上計画の支援措置(👈中小企業庁HP)の対象になるのだと思います。

[適用時期]
令和4年4月1日以後に終了する事業年度から適用する。
なお、中小企業等経営強化法の改正法の施行の日から令和6年3月 31 日までの間に中小企業等経営強化法の経営力向上計画(経営資源集約化措置(仮称)が記載されたものに限る。)の認定を受けた株式等が対して適用される。

 

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【法人税】所得拡大促進税制の見直し

2020-12-14

先日(12月10日付)、令和3年度の税制改正大綱が政府与党より公表されました。ここ数年大きな改正項目はありませんでしたが、今年も普段の実務に直結する改正は多くありません。

改正項目としては、まずは「所得拡大促進税制」でしょうか。


経済の好循環のためには、企業が生み出した付加価値の従業員給与への還元を促すことが引き続き必要である。雇用の維持・確保への懸念がある中においては、特に中小企業全体として雇用を守りつつ、賃上げによる所得拡大を促すことが重要である。このため、賃上げだけでなく、雇用を増加させる企業を下支えする観点から、従来の①雇用者給与等支給額が前年度を上回ること、②継続雇用者給与等支給額の 1.5%以上増加という要件を雇用者給与等支給額が1.5%以上増加という要件に見直した上で2年延長する。(令和3年度税制改正大綱13頁より)


現行法では「継続雇用者」となっていますが、これが「雇用者」に変わります。
継続がつくか否かで、実務における事務の労力に大きな違いがあります。

継続雇用者だと次の全ての要件を満たす者を抜き出して集計しなければなりませんでした。
・前事業年度及び適用事業年度の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者である。
・前事業年度及び適用事業年度の全ての期間において雇用保険の一般被保険者である。
・前事業年度及び適用事業年度の全てまたは一部の期間において高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていない。

さらに、継続がつかなくなることで必ずしも給料をあげなくても、雇用を増やすことでこの制度の適用が受けられることになります。


[適用要件]

改正前 改正後
①雇用者給与等支給額 > 前期の雇用者給 与等支給額 雇用者給与等支給額 ≧ 前期の雇用者給与等支給額×101.5%
継続雇用者給与等支給額 ≧ 前期の継続雇用者給与等支給額×101.5%

[税額控除]

改正前 改正後
(雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)× 15% (雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)× 15%
下記の①及び②の要件を満たす場合は、15%に10%上乗せして25%となる。
継続雇用者給与等支給額 ≧ 前期の継続雇用者給与等支給額×102.5%
②下記のいずれかを満たす場合
イ)適用事業年度における教育訓練費の額が前事業年度における教育訓練費の額と比べて10%以上増加していること。
ロ)適用事業年度の終了の日までに中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされて 法人又は個人のその事業に係る国内雇 いること。
同左

雇用者給与等支給額 ≧ 前期の雇用者給与等支給額×102.5%
②下記のいずれかを満たす場合

イ)同左

ロ)同左

控除税額は適用年度の法人税額の20%を上限とする。 同左

[適用時期]
令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される。

[留意点]

・上記①及び②の要件を判定する場合には、雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しない。
・税額控除率を乗ずる基礎となる雇用者給与等支給額から前期の雇用者給与等支給額を控除した金額は、雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除して計算した金額を上限とする。

 

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【法人税】賃上げ・生産性向上のための税制(大企業向け)の見直し

2020-12-02

政府・与党は大企業の採用を促進する税優遇措置を2021年度に導入する。新卒や中途の新規採用者に支払う給与支給額が前年度より一定額増えた企業に支払額の15%を税額控除する。新型コロナウイルスによる採用減で若年層の雇用環境が「氷河期」に陥らないよう税制で手当てする。

18年度に導入した大企業に賃上げを促す現在の法人税減税の仕組みを抜本的に改める。コロナ禍で賃上げしにくい企業が増えているため、制度の軸足を賃上げから雇用下支えに移す。(2020/11/28 日経)


賃上げを促す法人税減税というのは、「賃上げ・生産性向上のための税制(大企業向け)」(経済産業省HP👈クリック))と「所得拡大促進税制(中小企業向け)」(中小企業庁HP👈クリック)の2本立てになっています。

経済産業省所轄の税制はどれもそうなのですが、この2つの税制も極めて煩雑な集計をしなければなりません。

例えば適用要件の一つに継続雇用者給与等支給額が前事業年度と比較して3%以上(中小企業の場合は1.5%)増加していなければならないとされています。

一口に継続雇用※といっても、従業員の中には、年の中途入社や退職した人、休職した人、非正規雇用者から正規雇用者になった人など様々な人がいます。そのすべての人について継続雇用に該当するか否か確認をしながら給与等の支給額を計算しなければなりません。

※継続雇用者とは以下の全てを満たす者を指します。
① 前事業年度及び適用年度の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者である
② 前事業年度及び適用年度の全ての期間において雇用保険の一般被保険者である
③ 前事業年度及び適用年度の全てまたは一部の期間において高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていない


税制は本来シンプルであるべきで、このような煩雑な集計をした結果3%(中小企業の場合は1・5%)に達しなければ無駄な作業になってしまいます。

そもそも企業が設備投資や賃上げをするにあたって、この制度がインセンティブになっているのか疑問ですし、その検証結果も公表されていないと思います。

減税制度があって減税額がこのくらい見込まれるから、賃上げをしよう、設備投資をしようといいうのが本来の姿だろうと思います。


新聞記事によりますと、「大企業に賃上げを促す現在の法人税減税の仕組みを抜本的に改める」とありますので、上記のうち「賃上げ・生産性向上のための税制(大企業向け)」の方を改正するのだと思います。

 

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【コラム】適用額の制限が見直し

2020-10-16

税金の申告にあたって、納税者にとって有利になる制度の適用を受けるための意思表示を、当初の申告(期限内申告、期限後申告)において行われなければならないものがあります。これを「当初申告要件」といいます。

この当初申告要件の多くは、平成23年の12月の税制改正において廃止されましたが、併せて控除額の制限※も廃止されています。
※益金不算入額や損金算入額,税額控除額を当初申告である確定申告書等に記載された金額を限度とすることをいいます。

主なものは次のとおりです。

受取配当等の益金不算入 法法23⑧
国等に対する寄附金、指定寄附金及び特定公益増進法人に対する寄附金の損金算入 法法37⑨
所得税額控除 法法68④

例えば所得税額控除は、改正前と改正後では次のようになっています。

改 正 前 改 正 後
③第1項(注:所得税額控除)の規定は、確定申告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする ④第1項(注:所得税額控除)の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定による控除をされるべき金額は、当該金額として記載された金額を限度とする

当初申告要件の廃止は,交際費を除き基本的に法人税法上の制度に限られています。
一方、租税特別措置法では適用額の制限が見直がなされ、一定の緩和がされています。

例えば、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除( 措法42の4 )では次のようになりました。

⑩・・・、確定申告書等(これらの規定により控除を受ける金額を増加させる修正申告書又は更正請求書を提出する場合には、当該修正申告書又は更正請求書を含む。)にこれらの規定による控除の対象となる試験研究費の額又は特別試験研究費の額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、これらの規定により控除される金額の計算の基礎となる試験研究費の額又は特別試験研究費の額は、確定申告書等に添付された書類に記載された試験研究費の額又は特別試験研究費の額を限度とする。

つまり、税務調査等で追加の法人税額が生じた場合に連動して控除限度額(例えば、法人税額の20%)が増えたような場合には、修正申告や更正の請求により控除額の増加を認めるというものです。

それ以外の、例えば調査の過程で試験研究の額が増加したとしても、確定申告書等に添付された書類に記載された試験研究費の額をベースに計算されるので控除額が増加することはありません。また、当初申告で試験研究費の額などの添付書類がない場合には適用はないことになります。

 

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【コラム】当初申告要件が存置した規定

2020-10-15

税金の申告にあたって、納税者にとって有利になる制度の適用を受けるための意思表示を、当初の申告(期限内申告、期限後申告)において行われなければならないものがあります。これを「当初申告要件」といいます。

この当初申告要件の多くは、平成23年の12月の税制改正において廃止されましたが、そのまま残った規定もあります。
主な規定は次のとおりです。

小規模宅地等の特例(相続税関係) 措法69条の4⑦
相続時精算課税制度(相続税関係) 相法21条の9②
居住用財産の譲渡の3,000万円の特別控除(所得税関係) 措法35⑪
住宅借入金等特別控除(所得税関係) 措法41㉛
研究開発税制(法人税関係、所得税関係) 措法42条の4⑩他
所得拡大税制(法人税関係、所得税関係) 措法42条の12の5⑤他

例えば、小規模宅地等の特例を見てみると次のような規定になっています。

⑦ ・・・相続税法第27条(注:期限内申告書)・・・の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を含む。・・・)に第1項の規定(注:小規模宅地等の特例)の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

これにより、小規模宅地等の特例は、当初申告(期限内申告書、期限後申告書)において認めれるということになります。

なお、これらの申告書に係る修正申告書ですが、稀なケースかも知れませんが例えば、当初申告で小規模宅地等の申告が漏れていて、税務調査で修正申告が必要になったような場合などが考えられます。

 

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【コラム】当初申告要件の廃止

2020-10-14

税金の申告にあたって、納税者にとって有利になる制度の適用を受けるための意思表示を、当初の申告(期限内申告、期限後申告)において行われなければならないものがあります。これを「当初申告要件」といいます。

この当初申告要件の多くは、次のとおり平成23年12月の税制改正において廃止されました。


当初申告時に選択した場合に限り適用が可能な「当初申告要件」がある措置について、次のいずれにも該当しない措置については、「当初申告要件」が廃止され、更正の請求範囲が拡大されました。
・ インセンティブ措置
・ 利用するかしないかで、有利にも不利にもなる操作可能な措置
次の措置については、上記のいずれにも該当しないことから、「当初申告要件」が廃止されました。(財務省HPより)


この改正により、確定申告で適用を受けなかった場合でも、修正申告や更正の請求において新たに制度の適用を受けることができます。
当初申告要件が廃止された主なものは次のとおりです。

受取配当等の益金不算入 法法23⑧
外国子会社から受ける配当等の益金不算入 法法23の2⑤
国等に対する寄附金,指定寄附金及び特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入 法法37⑨
所得税額控除 法法68④
外国税額控除 法法69⑮⑯
公益社団法人又は公益財団法人の寄附金の損金算入限度額の特例 法令73の2 ②
適格合併等による欠損金の引継ぎにおける譲渡等損失額の損金不算入の対象外となる資産の特例 法令112 ⑥三ロ
交際費課税における中小企業者の定額控除限度額の損金算入の特例 措法61の4⑤

この他、所得税や相続税・贈与税の規定にも対象となるものがあります。
詳しくは国税庁HP 👈(クリック)をご参照ください。


例えば、受取配当金の益金不算入では次のように改正されました。

改 正 前 改 正 後
⑦ 第1項の規定は、確定申告書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細の記載がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により益金の額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。 ⑧ 第1項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により益金の額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。

この改正により、当初申告で受取配当金の計算に誤りがあったとしても、更正の請求で申告の是正ができるようになりました。

 

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【コラム】期限内申告要件

2020-10-13

税金の申告にあたって、納税者にとって有利になる制度の適用を受けるための意思表示を、申告期限内の申告で行われなければならないものと、当初の申告において行われなければならないものがあります。

前者を”期限内申告要件”といい、後者を”当初申告要件”といいます。

ちょっと見には同じもののようですが、後者には期限内申告の他に期限後申告も含まれています。
いずれの場合も原則として、更正の請求や修正申告で新たに制度を適用させることはできません。


期限内申告要件のある特例には次のものがあります。

■青色申告65万円控除(所得税関係)
青色申告者の特典の一つで、所得金額から最高65万円又は10万円を控除するという制度です。
この制度の適用を受けるための要件の一つに、次の期限内申告要件があります。

・・・明細書の添付があり、かつ、当該確定申告書をその提出期限までに提出した場合に限り、適用する。(措法25の2)

■相続時精算課税制度(相続税関係)
この制度を選択すると、 贈与時に2,500万円までの特別控除が認められています。
ただし、贈与者が死亡して相続が発生した場合には、この特例により贈与した財産を相続財産に加算して相続税額を計算するという制度です。

つまり、生前の贈与は相続時に相続税に取り込まれて精算されるという制度です。
なお、一旦相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税に戻ることはできません。

この制度の適用を受けるための要件の一つに、次の期限内申告要件があります。

前項(注:相続時精算課税制度)の規定の適用を受けようとする者は、・・・、第28条第1項注:その年の翌年2月1日から3月15日までの申告期限の期間内に・・・届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

 

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【法人税】損金経理要件と役員退職給与

2020-10-12

法人税では、所得金額の計算において、損金として認められるためには、損金経理が要件となっている項目があります。

損金経理とは、「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう。(法法2①二十五)」とされています。
つまり、この損金経理が要件となっている費用項目については、株主総会で承認された決算書において費用処理されていなけえばならない、言い換えれば申告調整(別表四での減算)は認められないということです。

例えば、減価償却費についてはつぎのように規定されています。

・・・損金の額に算入する金額は、・・・償却費として損金経理をした金額のうち、・・・「償却限度額」・・・に達するまでの金額とする。(法法31①)

これは次のようになります。

損金経理した金額 ≧ 償却限度額 ⇒  償却限度額
損金経理した金額 < 償却限度額 ⇒  損金経理した金額

減価償却費の他に損金経理を要件とする主な項目はつぎのとおりです。
・繰延資産
・未払使用人賞与
・貸倒引当金
・貸倒損失
・圧縮記帳 等々


ところで役員退職給与の損金算入ですが、平成18年の税制改正までは損金経理が要件でした。

それまでは、役員に支給した退職給与は、職務執行の対価の後払いなのか利益処分なのかの判断を、会社に求めていました。
職務執行の対価の後払いならば損金となりますが、その意思表示として損金経理が必要でした。

平成18年に会社法が施行され、役員退職給与は役員の職務執行の対価であるとされ、利益処分による支給ができないことになりました。
これに伴い、それまで損金経理が損金算入の要件とされていましたが、損金経理要件が廃止され、次の取り扱いになっています。

法人税基本通達9-2-28( 役員に対する退職給与の損金算入の時期)

退職した役員に対する退職給与の額の損金算入の時期は、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする。
ただし、法人がその退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額につき損金経理をした場合には、これを認める。

これにより、原則は株主総会の決議で役員退職給与としての債務の額が確定するため、そのタイミングで損金に算入されます。
なお、経理処理は問われていませんので、役員退職給与引当金の取り崩しであっても、仮払金経理であっても、申告調整(別表四での減算)が認められることになります。

ご注意いただきたいのは、上記通達のただし書きのケースです。
例えば、病気死亡などにより株主総会の決議前に役員退職給与を支払ったり、資金繰りの都合で株主総会後に支払ったりした場合には、損金経理が要件となっています。

 

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【法人税・消費税・地方税】よく似た名称の税

2020-10-08

企業の経理担当はご存知だと思いますが、法人の申告にはよく似た名前が出てきます。

【地方法人税】
地方の名称がついていますが、法人税とともに納める国税で、法人税の申告書「別表1の次葉」で税額計算し、「別表1」で納付税額を算出します。

平成26年の消費税率の引き上げ(5%→8%)の際の税制改正で創設され、平成28年度に改正されています。

改正の趣旨は、地方法人課税の偏在是正のため、法人住民税法人税割の税率を5.9%引き下げる(都道府県分を3.2%から1%の2.2%、市町村分を9.7%から6%の3.7%、それぞれ引き下げる)とともに、地方法人税の税率を5.9%(引下げ分相当)引き上げることとされました。(国税庁HP 👈クリック)

【地方消費税】
これは、都道府県税ですが、国税である消費税の計算ととともに一旦国に納付します。

国は納付があった月の翌々月末日までに、地方消費税を都道府県に払い込みます。一方、都道府県は徴収取扱費を国に支払います。各都道府県に払い込まれた地方消費税は、都道府県ごとの消費に相当する額に応じてあん分し、清算されます。(東京都HP 👈クリック)

【地方法人特別税 ⇒ 廃止】
平成20年度の税制改正により創設され、地方税である事業税とともに計算しました。
制度の趣旨は、地域間の税源偏在を是正するためですが、消費税を含む税体系の抜本的改革が行われるまでの間の暫定措置でした。

令和元年9月30日までに開始する事業年度をもって廃止され、特別法人事業税に衣替えしました。

【特別法人事業税】
令和元年度税制改正により、地方法人課税における税源の偏在を是正するため、法人事業税の一部を分離し、特別法人事業税が創設されました。(東京都HP👈クリック)

 

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【法人税】グループ間での簿価譲渡

2020-10-07

平成22年度の税制改正により創設されたグループ法人税制により、完全支配関係がある法人間で支出した寄附金の額がある場合には、寄附をした法人の寄附金の額は全額を損金不算入になるとともに、寄附を受けた法人の受贈益の額についてはその全額を益金不算入とすることになりました(法 25 の2、37 ②)。
この場合においては、親法人による子法人の株式の寄附修正が必要となっています(法令9①七、119の3⑥)。

また、完全支配関係にある法人間で譲渡損益調整資産※を譲渡した場合には、その譲渡損益は繰り延べることとされました(法 61 の 13 ①)。

※譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産で次に掲げるもの以外のものをいいます。
・売買目的有価証券
・譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
・その譲渡の直前の帳簿価額が 1,000 万円に満たない資産


ところで、完全支配関係にある親法人から子法人へ譲渡損益調整資産を簿価で譲渡した場合はどうなるでしょうか。
(例)
親法人A社から100%子会社B社へ簿価1億円(時価3億円)の土地を簿価で譲渡した。

【寄附金部分について】
土地の簿価と時価との差額2億円については、親会社A者から子会社B社へ寄附をしたことになります。
グループ法人税制の適用により、親会社A社の寄附金2億円は全額損金不算入、子会社B社の受贈益2億円は全額益金不算入となります。
また、親会社A社においては、子会社株式の2億円を増額する寄附修正が必要となります。

【譲渡益部分の繰延について】
親会社A社の譲渡損益調整資産の譲渡益2億円は、グループ法人税制により繰り延べられることになり、譲渡損益調整勘定として子会社B社がその土地を譲渡等する時まで課税が留保されることになります。

-A社の仕訳-

現金  1億円//土地 1億円
寄付金 2億円//譲渡損益調整勘定2億円
寄付金2億円は全額損金不算入(法37②)
譲渡損益調整勘定による利益の繰り延べ
(法 61 の 13 ②)
子会社株式 2億円//利益積立金 2億円 寄附修正(法令9①七、法令119の3⑥)

-B社の仕訳-

土地 1億円//現金  1億円
土地 2億円//受贈益 2億円
受贈益2億円は全額益金不算入(法25の2①)

 

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