法人税

【法人税】グループ法人税制の寄附金

2020-10-06

平成22年度改正でグループ法人税制が導入され、法人による完全支配関係にある法人間では、寄附金の額はその全額が損金不算入となり、受贈益の額はその全額が益金不算入とすることになりました(強制的用)。

この規定の適用は、法人による完全支配関係の場合に限られますが、その趣旨はつぎのように説明されています。

これが除外されているのは、例えば親が発行済株式の100%を保有する法人から子が発行済株式の100%を保有する法人への寄附について損金不算入かつ益金不算入とすると、親から子へ経済的価値の移転が無税で行われることとなり、相続税・贈与税の回避に利用されるおそれが強いことによります。(財務省HP 👈クリック)

しかし、寄附をすることによって、寄附をする側から受ける側に何らかの資産が移転しています。
移転した財産に対応する分だけ、寄附をした法人の株式価値が減少し、受ける側の株式価値が増加することになります。

そこで、グループ法人税制においては、親法人において寄附をした側の法人の子会社株式の簿価を減額修正し、寄附を受けた側の子会社株式の簿価を増額修正することとしました。この寄附修正の相手勘定は利益積立金額となります。

この寄附修正の趣旨については、つぎのように説明さてれいます。

グループ法人間の寄附について課税関係を生じさせないこととなるため、これを利用した株式の価値の移転が容易となり、これにより子法人株式の譲渡損を作出する租
税回避が考えられることから、これを防止するために、子法人株式の帳簿価額を調整するものです。(財務省HP 👈クリック)

例えば、A社がB社株式を100%保有する親子間で、A社がB社に資金援助として現金1億円を寄附したとします。
-A社の仕訳-

寄付金 1億円//現金 1億円 寄付金1億円は全額損金不算入(法37②)
子会社株式 1億円//利益積立金 1億円 寄附修正(法令9①七、法令119の3⑥)

-B社の仕訳-

現金 1億円//受贈益 1億円 受贈益1億円は全額益金不算入(法25の2①)

上記の例で、寄附ではなく無利息貸付で、税務調査において2%の利息認定を受けたとしたらどうなるでしょうか。
-A社の仕訳-

貸付金 1億円//現金 1億円
寄付金 200万円//受取利息 200万円 寄付金200万円は全額損金不算入(法37②)
子会社株式 200万円//利益積立金 200万円 寄附修正(法令9①七、法令119の3⑥)

-B社の仕訳-

支払利息 200万円//受贈益 200万円 受贈益200万は全額益金不算入(法25の2①)

この場合、寄附金と認定されのは授受されるべき利息相当額の現金などの資産部分になります。
損益部分である受取利息についてはA社の益金、支払利息についてはB社の損金となります。

したがって、グループ全体では所得は変動しませんが、個別の会社でみると所得は変動します。

 

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【法人税】グループ法人税制外し

2020-10-05

平成22年度の税制改正で、グルー法人税制ができましたが、完全支配関係にある企業グループには強制適用です。
制度創設の趣旨はつぎのとおりです。


グループ法人が一体的に経営されている実態に鑑みれば、グループ内法人間の資産の移転が行われた場合であっても実質的には資産に対する支配は継続していること、グループ内法人間の資産の移転の時点で課税関係を生じさせると円滑な経営資源再配置に対する阻害要因にもなりかねないことから、連結納税の選択の有無にかかわらず、その時点で課税関係を生じさせないことが実態に合った課税上の取扱いと考えられます。
このことから、完全支配関係(・・・)がある内国法人間の取引一般について、次の措置が講じられました。・・・(財務省HP 👈クリック)


このグループ法人税制の中に、譲渡損益調整資産※を100%グループ内の他の内国法人に譲渡した場合には、その譲渡損益を繰り延べるという規定があります。

繰り延べられた譲渡損益は、その譲渡を受けた他の内国法人がグループ外へ譲渡したり、減価償却費の計上に応じて戻し入るとされています。(法 61 の 13)(詳しくは国税庁HP 👈クリック)

※譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産で次に掲げるもの以外のもの。
・売買目的有価証券
・譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
・その譲渡の直前の帳簿価額 が 1,000 万円に満たない資産


「今期相当利益がでそうだ。」という場合に、会社の資産に含み損のあれば、グループ内の他の会社に譲渡して損失を実現させてしまうという節税が(ややグレーですが)行われて来ました。

ところが、グループ法人税制ができたことにより100%グループ内ではできなくなってしまいました。

そこで、総務経理部長に第三者割当増資をして、形式的に100%グループではなくしてしまうことにより、グループ法人税制を逃れた事例があります。
これに対し、課税庁は「 同族会社等の行為又は計算の否認同」(法第132)を適用し、更正処分をした事案があります。



4 請求人は、本件割当増資によって請求人・A社間の完全支配関係を解消し、本件繰延制度の適用要件を不充足とすることにより、同制度の適用を免れ、本来、同制度の適用により繰り延べられるべき固定資産売却損を、各事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入し、法人税額を減少させたものと認められるから、本件割当増資によって「法人税の負担を・・・減少させる結果となる」ものと認めることができる。
5 以上によれば、本件各更正処分は適法である。

裁決年月日 H28-01-06 TAINSコード番号 F0-2-629


 

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【法人税】コロナ禍と定期同額給与

2020-09-11

法人税法における定期同額給与は、「臨時改定事由」か「業績悪化改定事由」に該当しないと、期中における改定は認められていません。

臨時改定事由 役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定
業績悪化改定事由 経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限る)

新型コロナウイルスの感染拡大にともない、業績が悪化した場合や業績悪化が見込まれることにより、期中に役員報酬を減額する場合があります。

国税庁では、このようなケースへの対応として「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」(国税庁HP👈クリック)を公表しています。

問6はイベント等の開催中止要請により、予定していた収入がなくなったので役員給与を減額するケースです。
問6-2は、外国からの入国制限が外出自粛要請により、主要な売上が減少し、今後さらに業績が悪化する見込みなので役員給与を減額するケースです。

FAQでは、問6の「業績が悪化した場合」、問6-2は「業績悪化が見込まれる場合」ですが、いずれの場合も業績悪化事由に該当するとしています。


テレビ報道などを見ていると、客層が家族連れに変わったがほぼコロナ前に戻った、テイクアウトが好調でコロナ前の8割り程度には回復したなどのコメントがあります。

緊急事態宣言解除を受け営業を再開、その後客足が戻りつつあるので期中に役員報酬を元に戻した、こういった場合はどうでしょうか。

これについては、一度業績悪化改定事由で減額をしたものを期中にもとに戻す法人税法の規定がないとして、定期同額給与とは認められないという見解が大勢のようです。

しかしながら、役員が病気が原因で職務執行ができない期間は減額し、職務執行が可能となったら従前の給与に水準に戻すのは臨時改定事由に該当するとする、下記Q&Aがあります。

今回の企業業績の悪化は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言など基づき、店舗の休業や国民の外出自粛をしたことによるものです。

下記Q&Aの役員の病気からの復帰がOKなら、企業が今回のコロナ禍での業績悪化から復帰するのも同様に考えてもよいのではないかと、個人的には思っています。


役員給与に関するQ&A (国税庁HP👈クリック)
(臨時改定事由の範囲-病気のため職務が執行できない場合)
[Q5]

ご質問のように、役員が病気で入院したことにより当初予定されていた職務の執行が一部できないこととなった場合に、役員給与の額を減額することは臨時改定事由による改定と認められます。また、従前と同様の職務の執行が可能となった場合に、入院前の給与と同額の給与を支給することとする改定も臨時改定事由による改定と認められます。したがって、甲に支給する給与はいずれも定期同額給与に該当します。

 

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【法人税】マンション管理組合の収益事業

2020-09-02

マンション管理組合が「稼ぐ活動」に乗り出している。携帯基地局のアンテナ設置や駐車場の外部貸しなどだ。収益を修繕積立金に充てるのが目的だが、軌道に乗れば訪問看護施設の誘致など、暮らしやすさを高められる。住まいの場で営利活動することへの合意形成がカギを握る。

東京都港区にある約580戸の「白金タワー」。19年4月に2階の共用施設を用途変更して、約800万円かけて改修し訪問看護ステーションを誘致した。資金は駐車場のサブリースで得た剰余金を充てた。(2020/08/29日経)


分譲マンションでは、住民の高齢化にともない、車を持たない生活に移行する世帯が増えてます。
分譲当時は不足気味だった駐車場も空きが目立ち、平置きはともかく機械式の立体駐車場はその維持費の負担が大きく、管理組合の会計や積立金を圧迫しています。

この空いた駐車場を外部に貸し出せないかと考えるのは当然だろうと思います。
マンションには、駐車場以外にも集会所を習い事や学習塾に時間貸しする、屋上をアンテナの基地局として貸し出す、広告看板などを設置させる、などが考えられます。

ところで、無粋な話ですが、マンションの建物や敷地を貸せば、その所得に対して税金はどうなるのかという問題があります。

マンション管理組合の多くは法人化していません。法人化していないマンション管理組合は税法的には「人格のない社団等」という扱いになります。

人格のない社団等とは、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものをいいます(法人税法2条①8)。
(例)PTA、町内会、研究会、同窓会、同業者団体、マンションの管理組合など

この人格のない社団等は、収益事業※から生じた所得に対してのみ法人税や住民税が課税されます。
管理組合員から徴収する組合費、管理費、修繕積立金、駐車場料金などは法人税の課税の対象とはなりませんが、外部に貸し付けた不動産貸付にかかる収益は収益事業に該当するので税金の対象となります。

※収益事業は34業種に限られています(国税庁HP👈クリック)

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【法人税・消費税】新型コロナウイルス感染症と中間納付

2020-08-19

日本の法人の数は264万社、そのうち最も多いのが3月決算で全体の20%を占めています。(国税庁HP👈クリック)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今年の3月以降売上が激減した会社も少なくないと思います。その中で、3月決算の会社の中間納付が11月に到来します。

赤字なら法人税は仮決算を組めば何とかなるかもしれませんが、消費税は赤字でも納税が出る場合があります。


法人税及び消費税の中間申告については、前期の確定した税額に基づく中間申告(及び予定納税)と、中間期間を一つの事業年度(又は課税期間)とみなして確定申告と同様に法人税額(又は消費税額)を計算する仮決算による中間申告とがあります。

1.予定納税の中間申告、又は仮決算による中間申告をし、納税猶予を受ける
この場合の猶予期間は、その猶予を受けた中間申告分や予定納税分と同じ年分(事業年度)の確定申告期限まででとなります。(国税庁HP👈クリック)

2.新型コロナウイルス感染症の影響により、期限までに提出することが困難な場合
確定申告と同様、その提出期限の延長が認められます。
また、中間申告書を提出することが困難な状態が、確定申告書の提出期限まで続く場合には、その中間申告書の提出は不要となります。
この場合は、確定申告書の余白に、「中間申告書は新型コロナウイルス感染症の影響により提出できなかった旨」を記載すればよいとのことです。

3.上記2.の場合におけるみなし申告との関係
中間申告書については、その提出期限までに提出がなかった場合には、その提出期限に提出があったものとみなされることとされていますが、みなされた後であっても、提出期限の延長は可能です。 (日本税理士会連合会HP👈クリック)

 

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【法人税・所得税・消費税】コロナにおけるやむを得ない理由

2020-08-18

問4‐2 青色申告の承認申請の取扱い

※ 個別の期限延長の取扱いは、申告や申請等をすることができないやむを得ない理由がある場合に認められるものです(国税通則法11条、国税通則法施行令3条3項)。
したがって、例えば、令和2年4月17日(金)以後に修正申告や更正の請求などの手続を行った後、別の日に青色申告の承認申請を行う場合には、その申請をすることができないやむを得ない理由があったとは認められず、令和2年分の所得税から青色申告をすることはできませんので、ご注意ください。(国税庁HP👈クリック)


新型コロナウイルス感染症に起因する申告等の個別延長は、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の提出は必要なく、申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延⻑申請」と記載すればよいことになったいます。

注意しなければならないのは、何でもかんでも申告書の余白に「新型コロナ・・・」記載すればよいというわけではないようです。
上述の国税庁のHPの※では、修正申告や更正の請求などの手続きができたのなら、青色申告の承認申請書の提出ができなかったということはないはずだから、青色申告の承認申請は認められないとしています。

この他にも、例えば所得税の確定申告をコロナの影響で4月に提出したが、消費税は納税資金が足りないことから6月に申告をしたという場合には、消費税の申告は期限内の申告とは認められないのではないかと思います。

つまり、所得税の確定申告ができるのなら、消費税の確定申告もできたでしょう、ということです。
このような場合は、所得税の確定申告と共に消費税の申告をすませ、別途「納税の猶予の特例(特例猶予)」(国税庁HP👈クリック)を利用することになります。

 

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【法人税】法人税の納税猶予

2020-08-17

現行法には、①換価の猶予(国税徴収法第151条及び第151条の2)と②納税の猶予(国税通則法第46条)がありますが、令和2年4月30日の新型コロナ税特法の成立・施行により、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が大幅に減少している方に向けて、③納税の猶予の特例(特例猶予)が創設されました。(国税庁HP👈クリック)


直接・間接を問わず新型コロナウイルス感染症により、申告期限までに申告・納付ができない場合は、その延長が認められています。

依然、新型コロナウイルス感染症の収束は見えていませんが、テレワーク、時差通勤、オフィス環境の整備などにより、コロナ前提の勤務体制も定着しつつあります。

会社の経理事務も次第に軌道にのり、例えば3月決算の会社の決算・申告業務が未だ終わっていないというケースはほぼないだろうと思います。

現状での喫緊の課題は、決算・申告事務よりも、納税をどうするかだと思います。
今年の2月までは好調だったため、3月以降に決算月を迎える会社は黒字で納税が発生しているというケースが相当数あると思われます。

ところが、多くの業種で3月以降新型コロナウイルス感染症の影響で売上が激減しています。
売上が減れば仕入れも減りますが、人件費や家賃などの固定費の負担が重く、これらの会社では急速に資金繰りを悪化しています。


納税については、可能なら延滞税なし・1年間猶予・無担保の新型コロナ税特法に基づく特例猶予を利用したいところです。
-要件-
・新型コロナウイルス感染症の影響により、国税を一時に納付することが困難。
・一時の納税により、事業の継続・生活維持を困難にするおそれがある。
・ 納税について誠実な意思を有する。
・ 猶予を受けようとする国税以外の滞納がない。
・ 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書の提出がある。

ただし、納 税の猶予申請書(国税庁HP👈クリック)を見てみると、当面の運転資金が6ヶ月分しか認められていません。

当面の運転資金等(6ヶ月分) 今後6か月間に予定されている臨時支出等の額 当面の支出見込額
現金・預貯金残高 当面の支出見込額 納付可能金額
納付すべき国税 納付可能金額 猶予額

 

昨今の経済状況を鑑みると6ヶ月分では心もとない、せめて1年分ぐらいは認めてもよいのではないかと思います。今後の当局の弾力的な運用が望まれます。

 

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【法人税】中小法人と中小企業者

2020-08-07

そのときには何とか理解できても、しばらくして思い返すとこんがらがっているのが、この中小法人と中小企業者です。
なお、令和元年の税制改正で中小企業者が改正されています。

中小法人は、法人税法の本法に定義されていることから「法人税法上の中小法人」、中小企業者は租税特別措置法に定義されていることから「租税特別措置法上の中小企業者」といったりすることがあります。

しかし、法人税法上の中小法人は租税特別措置法の中でも使われていたりします。
中小法人、中小企業者が適用される主な税制は、末尾を参照ください。

まず、法人税法上の中小法人は下記です。

資本金の額が1億円以下であるものが中小法人となります。(法人税法66条2項、6項2号)

ただし、次に掲げる法人を除きます。
・大法人(資本金の額が5億円以上の法人)との間に完全支配関係(国税庁HP👈クリック)がある普通法人

一方、租税特別措置法上の中小企業者は下記です。

資本金の額が1億円以下であるものが中小企業者となります。(租税特別措置法42条の4第8項7号、同施行令27条の4第12項)

ただし、次に掲げる法人を除きます。
・2分の1以上を同一の大規模法人※に保有されている法人
・3分の2以上が複数の大規模法人※の所有に属している法人

※大規模法人とは、次に掲げる法人をいう。
・資本金の額が1億円超の法人
・大法人(資本金の額が5億円以上の法人)との完全支配関係(国税庁HP👈クリック)がある普通法人

※厳密な表現ではありませんのでご注意ください。

-中小企業者が適用される主な税制-

中小法人 中小企業者
法人税の軽減税率 (租税特別措置法42条の3の2第1項) 試験研究費の税額控除の特例 (租税特別措置法42条の4第4項)
欠損金の繰越控除制度の特例 (法人税法57条1項、11項) 機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除の特例 (租税特別措置法42条の6)
欠損金の繰戻還付 (法人税法80条1項、租税特別措置法66条の13第1項) 経営改善設備を取得した場合の特別償却または税額控除の特例 (租税特別措置法42条の12の3)
交際費等の損金不算入制度の特例 (租税特別措置法61条の4第2項) 特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却または税額控除の特例 (租税特別措置法42条の12の4)
特定同族会社の留保金課税の適用除外 (法人税法67条1項) 給与等の引上げおよび設備投資を行った場合等の税額控除の特例 (租税特別措置法42条の12の5②)
貸倒引当金の適用 (法人税法52条1項、2項) 特定事業継続力強化設備等の特別償却 (租税特別措置法44条の2)

 

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【法人税】中古車節税

2020-07-17

中古資産を取得した場合には、法定耐用年数か見積もり耐用年数で減価償却費を計算します。

通常、耐用年数の見積もることは困難な場合がほとんどです。
そこで、実務ではつぎの簡便法(👈国税庁HPクリック)による耐用年数の算定方法を利用します。

・取得した中古資産が法定耐用年数の全部を経過している場合
その資産の法定耐用年数の20%に相当する年数※

・取得した中古資産が法定耐用年数の一部を経過している場合
その資産の法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数※

※1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。
その年数が2年に満たない場合には2年とします。


この簡便法による耐用年数を利用して、海外中古不動産による節税スキームが盛んに行われました。
海外不動産は土地よりも建物に価値があるため、耐用年数をある程度経過していても建物の価値が下がりません。

一方、上記簡便法による耐用年数を用いれば多額の償却費を計上することができます。
例えば、木造建物の耐用年数は22年ですが、築年数が22年を超えた建物を取得すれば、22年×20%=4年(1年未満切り捨て)なので、4年で減価償却できてしまいます。

もっとも2020年度の税制改正でこのスキームは蓋をされたので、今は節税メリットはなくなっています。


この外でこの中古資産の耐用年数を利用した節税スキームとしては、海外不動産に比べれば小ぶりになりますが、中古車の節税スキームがあります。

新車時の価額が1千万円を超えるような高級車の中には、走行距離も少なく程度のよいものがたまに見かけます。

例えば、法人が期首に新車を1,300万円で購入すると、初年度の減価償却費はつぎです。
1,300万円×0.333(法定耐用年数:6年定率法)=4,329,000円

一方、同じ車種を4年落ちの中古車で800万円で購入した場合の減価償却費はつぎになります。
800万円×1.000(簡便法による耐用年数:1年定率法)=8,000,000円

これは、(法定耐用年数6年−経過年数4年)+4年×20% =2.8年 → 2年
2年の定率法の償却率は1.000であるためです。

ただし、前提条件が期首に取得となっています。
期の途中で取得した場合は月数按分になりますのでご注意ください。

 

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【所得税・法人税・相続税】赤字の会社に不動産を寄付したら

2020-06-06

税金を扱う者にとっては当然と思っていても、普通の人から見たら「へぇ~!」とうことがあります。

~以下の事例はfictionです~
Aという会社があります。株主は、創業者甲とその長男乙です。
A社は、例えば新型コロナウイルスの影響で今期は大幅な赤字の見込みです。
甲は、自身の相続対策と会社の財務基盤強化を兼ねて、個人で保有しているオフィスビルを会社に贈与しました。

今期は大赤字なので、会社はオフィスビルのもらって受贈益が計上されても赤字と相殺され、大した税額にはなりません。

この場合、実はビルをもらったA 社の法人税だけでなく、贈与した甲の所得税、甲から長男乙への贈与税について、事前にタックスプランニングしておく必要があります。

-A社-
A社はオフィスビルをただでもらったわけですから、その時価相当額は特別利益になります。その特別利益と今期の赤字は相殺され、その差額が法人税の課税対象となります。

もっとも法人税は課税されますが、オフィスビルの賃料は今後の会社の安定収入になりますし、財務基盤は強化されます。

-創業者甲-
所得税には「みなし譲渡(所得税法59条)」という規定があります。これは、法人に対して贈与したり、時価の2分の1を未満の価額で譲渡した場合、その資産の時価を収入金額として譲渡所得課税するというものです。

もっとも一時的にはオフィスビルの贈与によって所得税が発生しますが、翌年以降の甲の所得税の節税にはなっています。

なお、この規定の適用を避けるためには、時価の2分の1以上で譲渡する必要がありますが、その場合も時価と譲渡価額に差額がある場合は、A社に対して受贈益が生じますので、注意が必要です。

-長男乙-
乙は関係ないだろうと思わるかもしれませんが、A社の株主は甲と乙です。A社に資産が贈与されたということは、A社の純資産が増加したということですから、A社の株式の価値が増加したということになります。

相続税法※9条(みなし贈与)という規定があり、このような事例の場合、A社株式の価値の増加分だけ甲から乙へ贈与したとみなされ、贈与税が課税されてしまいます。

したがって、会社に資産を贈与する場合は、会社の贈与前と贈与後の株式を評価して、贈与税の課税があるのかないのか、贈与税課税があるとしても創業者Aの将来の相続税の節税効果との比較などのタックスプランニングしておく必要があります。

※相続税法の中に、贈与税も定められています。

 

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